プライベートであれ出張であれ、旅へ出るときはいつもKamLanのレンズとミラーレスカメラを鞄の片隅に忍ばせていた。驚くほどコンパクトなそのレンズ達は掌にのせるとひんやりとした金属の質感が皮膚に伝わってきて大変心地よい。同時にコンパクトながらも意外にずしりと重みを感じるその鏡筒は、光を集める硝子の塊がぎっしりと詰まっていることを実感でき、「きっと素敵な写真を撮ることができる」という確信を抱かせてくれるのだ。 KamLanのレンズを初めて手にしてから1年あまり。そのレンズ達は旅先での何気ない光景を、繊細な光を捉え、期待以上のイメージを僕に残してくれた。COVID-19と名付けられた存在が現れる前までは。 今年に入ってから僕はすっかり旅に出る機会を失ってしまった。それはすなわちKamLanのレンズで世界を見つめる機会の喪失でもあった。緊急事態宣言から続く自粛ムードの中で僕は次第にカメラから遠ざかって行った。 7月のある日、台湾にいるKamLanの社長から連絡が入った。新製品の試作品が出来上がったので送りたいという内容だった。社会が混乱に陥っている間も、一途に新しいレンズの開発を続けていた彼に驚き喜びを感じると共に、同じ写真好きとして深い敬意を抱いた。 それから一週間後そのサンプルが手元に届いた。私は届いたばかりのレンズを手にふらりと海沿いを歩いた。途中立ち寄った夕刻のカフェの店先で、そのレンズは驚くほど繊細な描写を見せてくれた。少し油断すると儚く消えてしまいそうなかすかな光を掬い取るように捉えてくれる。徐々に薄暗くなる中、僕は時が経つのを忘れてシャッターを切り続けた。 これを機に、久しぶりに身の回りのものから撮影を再開しよう。彼の自信作は、きっと写真を撮ることの喜びを僕に再度実感させてくれることだろう。一人の写真好きが想いを込めてつくるレンズを、一人でも多くの写真好きのみなさんに体験していただければと思う。
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