入賞作品発表
「サイトロンジャパン天体写真コンテスト2021」は、株式会社サイトロンジャパンの創立60周年を記念して開催されました。当社が主催として初の試みであったフォトコンテストでしたが、数多くの素敵な作品をお寄せいただきました。
本コンテストにご応募を賜りました皆様に、心より感謝申し上げます。
厳正な審査の結果、各賞の入賞作品が決定いたしましたのでここに発表いたします。
総評 |
沼澤 茂美
(天体写真家、イラストレーター)
たくさんのご応募ありがとうございました.「天体写真」という大きなテーマのもと非常に多様な作品の応募があり,いずれの作品も本コンテストに対する強い意気込みを感じました.星空風景からディープ・スカイをとらえた作品まで,それぞれの分野に特化した撮影手法やテクニック,さまざまな環境の中での工夫など,作品の撮影工程や取り組みも多様性に富んでいることを実感しました.
渡邉 晃
(サイトロンジャパン代表取締役)
たくさんのご応募をいただき深く御礼申し上げます.すばらしい作品が多く,審査は非常に困難でした.撮影技術の高い作品が多数ありましたが,斬新な表現,新しい魅力にあふれる作品に出会えたことが大きな喜びでした.U-29賞には若い世代の情熱を応援したい思いから3名を選出しました.来年以降, 第2回を開催できればと思います.引き続きよろしくお願いいたします.
中川 昇
(サイトロンジャパン中川光学研究室 室長)
予想を上回る数の応募をいただき, たいへん嬉しく思いました.選考をしながら「これは生半可な気持ちで臨んではいけないぞ」と何度も自分に言い聞かせるほど,応募者の情熱を感じました.とくに将来を担う若い方の応募が多く,それらの作品からは「新しい技術」と「天体写真とはなにか?」というせめぎ合いの中で作品を生み出す努力をされていることが感じられ,天文界の将来に希望の光を見出すことができました.
受賞作品一覧 |
大賞
Grand Prize
オリオン座 三ツ星周辺平内隆司構図を決めるにあたり,馬頭星雲周辺のおなじみのエリアは準主役としアルニラム周辺の分子雲を主役にすることにしました.撮影は往復8時間の記憶に残る遠征となりましたが,とびきり暗い空のおかげで淡い分子雲の表現も無理なくできたと思います. (平内隆司) |
【評:渡邉 晃】
この作品の新鮮な構図にまずは眼を奪われました.光条をアクセントに三ツ星を大胆に対角線に配すことで構図に緊張感が生まれました. 美しく表現された燃える木と馬頭星雲の色味のちがいやそれぞれの星の色のちがい,豊かな諧調で繊細にとらえられた画面全体に広がる分子雲など,画面の隅々に魅力があふれており,いつまでも眺めていたくなります.高い撮影技術をベースに,さらなる表現力を発揮された優れた作品として大賞に輝きました.
準大賞
Semi-Grand Prize
モザイクによるアンドロメダ銀河永弘進一郎撮影時は雲の通過が多い一方で大気の状態はよく,詳細まで写りました.腕の部分の色の変化や,周辺のハロによるH2領域のかすみ具合の差を意識して立体感を表現しました.いつも撮影の夜は朝帰り,曇りの夜は画像処理ばかりの私ですが,子どもたちと美しい妻も受賞を喜んでくました.感謝しています. (永弘進一郎 仙台高専天文部) |
【評:沼澤 茂美】
色彩に富み,なおかつみごとなディティールを示しているアンドロメダ大銀河.私たち審査員一同は,サイトロンのディスプレイを飾るような艶やかな作品という視点から,満場一致でこの作品を選びました.雲の切れ間を狙っての短時間の3コマモザイクとのことですが,全面にわたる画像のクオリティーは圧巻です. 高速光学系を有効に使い,適切な画像処理による美しい1枚でした.
月齢3.7中西直樹3階を天文台とした自宅を建築しましたが,入居後は忙しく観望だけを楽しんでいました.撮影当日は冬にしてはシーイングがよく,急遽撮影することにしました.画像処理で無理をしなくても,元々の像がシャープだったので, 階調表現に気を付けながら処理しました.自宅天文台での初作品が準大賞に選ばれてうれしいです.(中西直樹) |
【評:中川 昇】
今回,嬉しいことに月面写真の応募が多数ありました.中でもこの作品はとくに目を惹き,私をはじめ審査員全員の目に留まりました.画像のシャープさ,諧調の豊富さ,構図のうまさなど, 基本的な撮影技術の高さはもちろんですが,欠け際のクレーター列や危機の海などが秤動の関係で絶妙な配置となっており, 貴重なチャンスをモノにした中西さんの粘り勝ちともいえます. 結果“理想的な三日月”のイメージに近い作品となりました.
沼澤茂美賞
Sigemi Numazawa Prize
冬の大三角、滝へダイブ小出文広この滝に最接近するためには急斜面をよじ登らなければなりません.斜面をはいつくばり, 撮影機材の設置場所も限られているため,構図を決めるのにも難儀しました.そのうちカメラがひっくり返るのではないかと,ドキドキしながらシャッターを切りました.(小出文広) |
【評:沼澤 茂美】
星空の景観をとらえた応募作品の多くが,ソフトウェアによる数十コマ合成での作品だったことに驚きました.本コンテストでは合成による作品も選考対象ですが,私はそうした作品に違和感を覚えたのも事実です.そんな中,固定撮影で星の軌跡をとらえた本作は, 40分間の時間経過が星空にも地上風景にも感じられ,圧倒的な臨場感を醸し出しており,他の応募作品に勝るものがありました.
サイトロンジャパン賞
Sightron Japan Prize
Moon, Aristarchus Plateau with Gas Planetsブレナー・ロバート子供のころから宇宙船で月を周回したかったけど,気付けばすでにおジイ.せめて宇宙船の窓から見た風景のような写真を撮りたいと思いました. (ブレナー・ロバート) |
【評:沼澤 茂美】
サイトロンのIR640フィルターを使用した作品.シャープカットフィルターを利用した長波長の光での撮影は,大気のゆらぎの軽減に効果的ですが,波長が長くなるほどにコントラストが低下する点に注意が必要です.本作の月面は,豊かなトーンとアリスタルコス周辺のディテールが見るものを引きつけるとても魅力的なものでした. 加えて同じ焦点距離でとらえた木星と土星を加えたことも好印象をもたらしました.
Sky-Watcher賞ドブソニアンで撮影したNGC7293らせん星雲有賀大助 Player One賞木星の立体視室谷文祥 |
Askar賞IC1396橋本賢二郎 |
【評:渡邉 晃】
有賀さんはドブソニアン望遠鏡と口径12cmニュートン鏡筒でらせん星雲をとらえました.短時間露出の撮影画像を多枚数スタックすることで,経緯台でもすばらしいディープ・スカイ天体作品を撮影できる好例です.橋本さんはACL200によるケフェウス座にある散光星雲の作品です.F4と口径の小さい鏡筒ですが,合計2時間の露出でvdB142象の鼻星雲を含め非常に精緻に表現しています.室谷さんの作品は木星の組写真.応募作にはほかにも優れた木星像がありましたが,惑星の自転を感じさせる本作が印象に残りました.惑星の撮影はある程度の技術レベルに達すると差を出すことがむずかしい中でアイデアの勝利でした.
カレンダー賞
※ 敬称略
※「月刊天文ガイド」では作品の北を上にして掲載していますが、本ページではご応募いただいた向きのまま掲載しております。
上位入賞作品は「月刊天文ガイド」(誠文堂新光社刊2021年11月5日発売号)に掲載となります。
また、カメラと映像のワールドプレミアショー「CP+2022」のサイトロンジャパンブースにて展示予定です。
ぜひ、この機会に皆様のご来場を心よりお待ち申し上げております。
■CP+2022(会場イベント)
開催日:2022年2月24日(木)~27日(日)
時間:10時~18時(最終日は17時まで)
開催場所:パシフィコ横浜 展示ホール内
サイトロンジャパン創立60周年記念 天体写真コンテスト2021
主催:株式会社サイトロンジャパン
協力:月刊天文ガイド